日本経済新聞 2011年7月7日 文化往来掲載
女性3人の出版社
23冊目の子供向け名画集
子供のための名画集が1冊くらいあってもいい−−。そんな考えから1992年にいち早く児童向けの美術画集の刊行を始めた女性3人だけの小さな出版社がある。今春まで大学教授を務めていた数学者の西村和子さんが40代後半で設立し、経営してきた博雅堂出版(東京・新宿)だ。このジャンルの先駆けといえる「おはなし名画」シリーズを19年間、年に1〜2冊のペースで手掛け、このほど通算23冊目となる「新・おはなし名画」シリーズ第3巻「対訳 鳥獣戯画」(監修・辻惟雄MIHO MUSEUM館長)を出版した。ゴッホや葛飾北斎ら国内外の画家の人生と作品を物語風に紹介するシリーズで、美術史家が監修し、西村さんが企画、執筆などを担当してきた。子供が本を広げた時にまず驚いてもらえるように、縦約33センチ、横約26センチと大型なのも特徴。国内の作品は所蔵先で実物と印刷見本を突き合わせ、色を忠実に表現する。今でこそ大手出版社が参入し、主要美術館の図書室にも児童むけ名画集がそろうが、本格的なものは当初珍しかった。昨年は、より小さな子ども向けに「おはなし名画をよむまえに」を出版。シリーズを読んだ子供がさらに理解を深めるための”続編”も「いずれはやってみたい」と西村さんは夢を膨らませる。