名画で語るキリスト教(ピエタ)

「何かを手に入れるためには何かを失わなければならない」というのは人類が長い時間をかけて学んだ叡智の一つです。神に犠牲を捧げるという宗教的な儀式もここから派生したのでしょう。当然、犠牲にするものの価値が高ければ高いほど、受ける恩恵も大きくなります。

キリスト教では人類の原罪を贖うためにキリストは自らを犠牲として差し出します。神、あるいはマリアが自分の息子を捧げたと解釈することも出来ます。究極の犠牲であり、キリスト教という宗教が持つ力の源泉でもあります。

ミケランジェロ「ピエタ」

「犠牲を捧げる」というと現代を生きる我々には無縁にも思えますが、勉強や仕事、あるいは投資や貯金も「将来の幸せ」と「目の前の快楽」のトレードオフです。自分の夢を達成するためには、あるいは偉大なことを成し遂げるためには、何かを我慢しなければならない局面があります。

スタンフォード大学で行われた有名なマシュマロ実験は「将来のより大きな成果のために、自己の衝動や感情をコントロールし、目先の欲求を辛抱する能力が、人の社会における成功に重要である」ことを示しています。

この実験では4才の子ども達にマシュマロを一つあげて、15分間我慢するように指示します。我慢できたら二つ目のマシュマロをもらえます。追跡調査によると、我慢できた子ども達の成長後の社会的な成功度が我慢できなかった子ども達に比べて有意に高かったそうです。

喜びを先送りにすることで、将来、より大きい恩恵を受けることが出来るのです。キリスト教の「犠牲を捧げる」物語は「楽して儲けたい」「うまいことやって出し抜こう」という我々の安易な考えに警告を発しているのかもしれません。

古典には現在を生きるヒントが満載です。美しい絵画とともにお楽しみください。
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名画で語るキリスト教
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