投資としての幼児教育:Giving Kids a Fair Chance(幼児教育の経済学)
Giving Kids a Fair Chanceという本を読んでいます。翻訳版も出ていて、邦題は「幼児教育の経済学」です。
2000年にノーベル経済学賞を受賞したジェームス・J・ヘックマン教授がアメリカの格差問題の解決策として幼児教育への投資の有効性が書かれています(翻訳版は日本向けにアレンジされているかもしれません)。
格差是正の施策として幼児教育は職業訓練や公共教育の改革、更生プログラムの充実等と比べても投資効果が高いことがデータで示されています。試算によると、その投資効果は平均的な株式投資より高いそうです。経済面だけでなく、成人後に肥満や鬱になりにくい等の心身の健康へ影響や犯罪等の社会的問題行動の抑制効果もあります。
アマゾンより
やる気・忍耐力・協調性――幼少期に身につけた力が、人生を変える!
なぜ幼少期に積極的に教育すべきなのか?
幼少期に適切な働きかけがないと、どうなるのか?
早い時期からの教育で、人生がどう変わるのか?ノーベル賞学者が40年にわたって追跡調査
脳科学との融合でたどりついた衝撃の真実!●5歳までの教育は、学力だけでなく健康にも影響する
●6歳時点の親の所得で学力に差がついている
●ふれあいが足りないと子の脳は萎縮する子供の人生を豊かにし、効率性と公平性を同時に達成できる教育を、経済学の世界的権威が徹底的に議論する。
「就学前教育の効果が非常に高いことを実証的に明らかにしている。子供の貧困が問題となっている日本でも必読の一冊」解説 大竹文雄
幼児教育の経済学 | ジェームズ・J・ヘックマン, 古草 秀子 |本 | 通販 | Amazon
敏感期:ある能力を伸ばすのに適した時期
知育の観点から見た場合、本書から学べる大切なことは以前、こちらにも書いたように、人間の脳には敏感期があり、その時期に適切な環境を用意してあげれば子どもの能力は自然に伸びるということです。幼少期に開いた能力の差はその後も持続されるだけではなく、成長した後の教育投資の効果にも差があることが示されています。スキルはスキルを生み”skills beget skills”、モチベーションをモチベーションを引き出す”motivation begets motivation”のです。
少し我田引水ですが、「おはなし名画をよむまえに」で美術に興味を持ち、「おはなし名画シリーズ」を読んで育ち、大人になってからは美術館通いを趣味としている方が沢山いらっしゃいます。その過程で育んだ感性や教養は彩り豊かな人生の基盤となっています。
認知能力と非認知能力
もう一つ重要な点として、本書ではIQ等の数値で測れる「認知能力」だけではなく感性、情緒等の「非認知能力」の重要性も強調されています。非認知能力を育てることは認知能力の向上にもつながりますし、社会的・情緒的に安定した人生を送るためにも大切です。
本書では、「高校卒業資格を持つが大学に進まなかったグループ」と「高校を修了していないが同等の学力を持つと証明される資格を持つグループ」を比較しています。後者は前者と同等の認知能力を持っていますが、非認知能力に欠けています。後者の離職率や離婚率は前者より優位に高く、彼らの稼ぐ力は高校中退者と同程度だったそうです。
写真で見る脳の発達状況
アマゾンの紹介文に「ふれあいが足りないと子の脳は萎縮する」とあります。素人目にも発育状態の違いがはっきりと分かり、衝撃的ですが、本書にも引用されている写真ですのでご覧ください。
Abnormal brain development following sensory neglect in early… | Download Scientific Diagram (researchgate.net)Abnormal brain development following sensory neglect in early childhood. These images illustrate the negative impact of neglect on the developing brain. In the CT scan on the left is an image from a healthy three year old with an average head size . The image on the right is from a three year old child suffering from severe sensory-deprivation neglect.
【注釈】感覚的な(嗅覚、味覚、聴覚、視覚、触覚等を通じた)刺激が与えられずに育った3歳児の脳(右)と正常な環境で育った3歳児の脳(左)の発育状態を比較しています。
脳への情報(刺激)の約80%は視覚を通じたもので、更にその80%は色に関するものです。また、異なる色(波長)は脳にとって異なる刺激になります。様々な刺激を受けることで脳の発達が促進されるのです。美しい色彩を見ながら読み聞かせをしたり、会話を交わすことは素晴らしい知育なのです。
幼児教育の効果は将来の収入の差だけにとどまりません。成人後の心身の健康、犯罪率、社会的・家庭内の問題行動の有無にも差が出ることが分かっています。更に、これらは世代を超えて連鎖される傾向があります。
「おはなし名画シリーズ」と「おはなし名画をよむまえに」
以上のことを踏まえると「おはなし名画をよむまえに(1冊:1200円×消費税)」や「おはなし名画シリーズ(1冊:3000円前後×消費税)」は長い目で見るとお得な投資であることがよく分かります。
「おはなし名画をよむまえに」は0~6歳位の幼児が自然に楽しく名画と触れ合うことが出来る名画絵本です。
色彩感覚を更に伸ばし、感性や想像力を育むのが「おはなし名画シリーズ」です。子どもから大人まで楽しめます。
⇩併せてお読みください⇩
トップページ
おはなし名画シリーズの紹介記事
おはなし名画をよむまえにの紹介記事
商品一覧