アンリ・ルソーの魅力(山田五郎先生のオトナの教養講座)
山田五郎先生のオトナの教養講座ではアンリ・ルソーについての動画を4本も作っています。それだけ魅力に溢れた、語るべきことが沢山ある画家だということです。
アンリ・ルソーに魅せられたのは山田五郎先生だけではありません。ピカソが晩年、「この歳になって、やっと子どもらしい絵が描けるようになった」と言ったのは有名な話ですが、これは「ルソーのような絵が描けるようになった」という意味だという説もあります。
ルソーが正式に絵の勉強したことがない素人画家だということは「風景の中の自画像」を見れば明らかです。
重心のかかり方をうまく描けていないために宙に浮いたように見える、遠近感を無視した巨大なルソーからは強烈な自意識と同時に、技術的な問題も伝わってきます。オトナの教養講座のルソーに関する第一弾の動画ではこの絵の持つ違和感を一つ一つ指摘しています。
ちなみに、この絵はルソーが生涯持っていた「ルソーにとってのモナ・リザ」だそうです。持っていた理由は「売れなかったから(山田先生談)」で、ちょこちょこ書き足していた内容もルソーらしくて面白いです。是非、動画をご覧になってください。
※レオナルド・ダ・ヴィンチがモナ・リザを生涯持ち歩いていた理由はこちらに書いています。
この絵だけを見ると「自意識が強くて妄想がちで面白いけど、絵は下手な画家」という印象しか残らないかもしれません。しかし、ルソーの魅力はこの絵だけでは語れません。
ルソーの最後の作品「夢」は2メートル×3メートルという大きな絵で、その迫力は写真からも充分に伝わってきます。
ルソーは自分ではジャングルを見たことがあると思い込んでいたようですが、実際にはフランスを出たことは一度もありません。つまり、想像(妄想)の中のジャングルを描いているのです。
現実には存在しない幻想的な植物や動物を、レイヤーを貼り付けたコラージュのような画法と鮮やかな色使いで細かく描き込んだこの大胆な作品はピカソや後のシュールレアリズムの画家たちに大きな影響を与えました。
ルソー絵画の集大成であり、最高傑作とされる作品です。
写真の発明以来、アートが出来ることを模索し続けていた画家たちにとって、強烈な自意識と妄想力を持ったルソーが思うままに描いた作品は強烈ないインパクトがあったことでしょう。同時代の画家たちの中で異彩を放っていたルソーは気が付けば時代を先取りしていたのです。山田五郎先生は「天才は天然に勝てない」「時代がルソーに追いついた」などと表現されています。
遠近感を出す必要がなく、足元を草で隠せるなど、ジャングルという題材がルソーの技術的稚拙さを問題にしなかったことも幸いでした。ルソーの天然力には脱帽するしかありません。
おはなし名画の「アンリ・ルソーとシャガール」では美しくも幻想的な絵画生み出した二人の生涯と36点の作品を大きくて綺麗な印刷で楽しめます。
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