本書では目を見張るような華やかな花鳥画から雄大で斬新な屏風絵まで、若冲の世界を堪能しながらその生涯を辿ります。若冲の生き物に注ぐ暖かい眼差しを知ることで作品の見え方も変わってくると思います。
「動物や植物の絵」
伊藤若冲は1716年、京都の錦小路にある大きな青物問屋の長男として生まれました。若い時から先生について絵の基本を習ったり、中国の絵画を写したりして勉強しましたが、一番描きたかったのは身近な動物や植物でした。勉強のために庭に数十羽も鶏を飼い、その動きや表情、身体の形や色の違い、羽一枚一枚を細かく観察して毎日、鶏の絵を描きました。
「まいごの象」
「象と鯨図屏風(MIHO MUSEUM蔵)」は若冲が晩年に描いた作品で「縦159.4×横354.0㎝」という大きなものですが、2009年の秋に美術館で公開されるまでどこでどうしていたのかは知られていません。象は大きな牙とは対照的に全体に愛らしくてファンタジックな雰囲気を醸しています。鯨には背びれがついています。
「ちょっとだけ中身の紹介(下に記載)」の「象鯨図屏風」は大阪美術倶楽部売立目録(昭和3年)より転載したものです。MIHO MUSEUM蔵のものと非常に似ていますが、よく見ると細部が少しづつ異なっているのが分かります。
「若冲ワールド」
本書の表紙にも使われている「白象群獣図」は6000個もあるという 四角いマス目を一つずつ塗りつぶして描いたものです。白い象のほかに龍、熊、猿、鹿、イタチなどが不思議な若冲ワールドを形成しています。スーラの点描画よりも100年近く前の話です。
(ちょっとだけ中身の紹介)